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病気について

股関節の疾患

股関節の疾患について

成人の股関節の疾患についてお話し致します。  さて股関節周辺が痛くなる疾患にはどのようなものがあるのでしょうか? これは2つに分けてまず股関節自体に問題があるものと、その他の部分に原因があるものとに分けられます。  股関節以外の疾患で股関節周辺が痛くなるものというと主なものは腰の疾患であります。 腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊椎柱管狭窄症です。 これらの疾患では大抵は腰の痛みを伴いますので間違えることのは少ないのですが、時に股関節だけが痛む場合があり、このような場合には誤診されていることもあります。
一般に股関節をいろいろな方向に曲げてみて痛みが起こらないようならば、股関節の病気ではない可能性が高いです。

成人の股関節の3大疾患

表1 成人の股関節三大疾患
  1 変形性股関節症
  2 特発性大腿骨頭壊死
  3 リウマチ性股関節症
  4 大腿骨頚部骨折

表1をご覧下さい。 成人の股関節の3大疾患といえば1~3の3つが挙げられます。 4の大腿骨頸部骨折は怪我によって起こるものです。 60歳以上の女性でちょっと転んで股関節が痛くなって歩けなくなった、 このような場合は大腿骨頸部骨折を疑う必要があります。 今回はこの3つの疾患の中で最も多い変形性股関節症を中心に話をします。

 

変形性股関節症

図1 股関節の構造
股関節の構造

これは股関節の老化を原因として起こる疾患です。 図1をご覧ください。
股関節はこのような構造をしています。 股関節は骨盤と下肢をつないでいる関節で、この関節は丁度ボールがソケットにはまったような形をしていますので、ball and socket joint と言われています。 その特徴はさまざまな方向に動くことです。

図2のレントゲンを見るとこのボールとソケットの間に隙間が見えます。 これは関節の表面を覆っている軟骨がレントゲンに写らないのでこのような隙間として見えるのです。 この軟骨は関節軟骨と呼ばれ、ショックアブソーバーとしての働きと関節が摩擦なくスムーズに動く為の重要な働きをしています。 この軟骨が何等かの原因ですり減って股関節が老化して起こるのが変形性股関節症です。

この原因には様々なものがありまして、1. 原因不明、2. 股関節の形が悪いため、3. リウマチ、等があります。 日本人で最も多いのが股関節の形が悪いために起こるものであります。

図3をご覧ください。 これは形の悪い股関節のレントゲン写真です。 図2の正常な股関節と比較してみて下さい。 図3のような関節では関節軟骨に異常な力が働くので、一生もたないですり減ってしまい、変形性関節症が起こってしまうわけであります。

図2 股関節の正常な状態   図3 変形性股関節症
股関節の正常な状態   変形性股関節症

変形性股関節症の症状

症状としては痛みと関節の動く範囲の減少、そして跛行です。 痛みは股関節部に起こります。
また前方に曲げたり、内側に回したりするときにも痛みます。
このような症状は最初は運動したり、長く歩いたりした後に一時的にみられます。 これが初期の症状です。
このような症状が長い期間繰り返された後で、股関節を動かしたときの痛みや歩行痛が頻繁に起こるようになります。 そして痛みも次第に強くなって跛行も目立つようになってきます。 始めの頃は一寸休んだり、横になれば症状が楽になります。 しかし末期になると特に歩き始めの痛みが強くなり、夜横になっていても痛んだりします。

また痛みが強くなるにつれて、次第に股関節の動きが悪くなります。 靴下が履きにくい、足の爪が切りにくい、和式トイレで困る、などの症状です。 注意しなければならないことは、股関節が悪いのに、膝が痛くなることがあることです。 これは股関節に分布している神経が同時に膝にも分布しているために起こることです。 なかには膝は何ともないのに膝の手術をされて、後で股関節の疾患を見つけられた患者様もいるほどです。

変形性股関節症の保存的治療

保存的治療とは手術によらない治療方法です。
どのようなものがあるのかと言いますと、まず痛みがあるときには消炎鎮痛剤を飲んだり、安静にしたりすることで、これは他の疾患と同じです。 それ以外の治療法としては股関節の負担を軽減することと、体重を減らすことであります。
片足で立ったときには体重のおよそ3倍の力が股関節にかかります。 ですから10kg体重を減らしますと、その3倍の30kgの負担を減らすことになるわけであります。
また杖をつく側は痛む側と反対の方ですのでお間違えのないよう。 そうしないと歩きにくいものです。

股関節を安定させるには股間節周辺の筋肉を鍛えることです。 どうして股関節の周囲の筋肉訓練が股関節を安定させるかといいますと、図4をみてください。 片足で立ったとき股関節の外側の筋肉が十分な力をもっていないと、体重で骨盤が反対側に傾くことになります。 そうしますと歩く度に股間節の軟骨は体重の3倍の力で押えつけながら、こすられることになるわけです。 これではさすがに何十年ももつはずの軟骨もたまったものではありません。 ですから股関節の周辺の筋肉訓練は有効なわけであります。

それから股間節の動きが悪くなってきますと、腰が痛くなってくることがあります。 これは股関節がまっすぐ伸びなくなると、腰の曲がりを強くする、すなわち鳩胸出尻という形になって腰に負担がかかるからであります。 この場合には股関節を後ろに曲げる体操が有効です。

表2 変形性股関節症の保存的治療
安静と消炎鎮痛剤
股関節の負担軽減
股関節の安定化

変形性股関節症の手術的治療

手術には大きく分けて股関節の形を変える手術、人工関節、間接固定術の3つがあります。 それぞれに幾つかの種類があり、また一長一短があります。

股関節の形を変える手術には内反骨切り術、外反骨切り術、臼蓋回転骨切り術等があります。 どれも聞き覚えのない手術だと思いますが、骨を切って股関節の形を変える手術は日本で開発された手術で、初期までの変形性股関節症に対して行われます。 これはソケットの部分が未発達でかぶりが不十分な患者様に行われる手術で、少々難しい手術ですが、なかなか良い手術方法です。

図5 人工関節のレントゲン写真

人工関節は進行期や末期の患者様に行います。 これも良い手術方法で、痛みもなくなりますし、動きも良くなります。 ですからとてもよい手術なのですが、問題は人工の関節は一生もつわけではないということなのです。 どの位もつかと言うのは人によって様々です。 その患者様の体重や活動具合、骨の強さなどによって10年で再手術が必要になったり、20年も30年ももつ方もいます。 そこで通常は50歳以下の患者様には行いません(図5)。

関節固定術は文字通り関節の骨をつけて関節を動かなくしてしまう手術方法です。 この手術をうけると大変日常生活が不便になるとお思いでしょう。 しかし実際は椅子にも座れますし、走ることも十分可能です。 先代の東大の教授は「最近はみんな人工関節をしたがるが、関節固定術をもっと見直すべきだ。 股関節固定術をした患者は野球もできるのだから。」とよくおっしゃっていました。 人工関節も確かに良い手術方法ですが、若い人でも一生使える安定した股間節を作れるという関節固定術もなかなか良い手術方法であります。
手術に関してよく聞かれる質問に、「手遅れにならないでしょうか?」「どうしても手術をうけなければならないのでしょうか?」というものがあります。 整形外科の手術では一般的に言って手遅れということは殆どありません。 股関節に関してもそうですが、臼蓋回転骨切り術だけでは進行期になってしまうと成績が悪いようです。 しかしそれでも数ヶ月遅らしてもまず問題はありませんし、痛くても命には別状ないわけですから、手術を受ける受けない、またその時期はご自分で決めれば良いのです。

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